オールオン4にした方が良い人。普通のインプラントにした方が良い人。
自分に適した治療はオールオン4?それとも普通のインプラント?どっち?
診断の基準は
◎歯だけを失っているのか?
◎歯と歯肉を失っているのか?
◎歯と歯肉と骨の全てを失っているのか?
健康な歯が5本以下で歯茎が痩せて入れ歯の安定も難しい状態の方は、残っている全ての歯を抜歯してでも「オールオン4」にするのが適している場合があります。健康な歯を抜歯してまで「オールオン4」が良い?と疑問に感じる方もいるかと思いますが、理由は
①痩せた歯茎を増やす手術は上顎の裏からくり抜いた歯肉を移植したり人工骨を使用して痩せた歯茎のボリュームを増やすわけですが、時間と費用と痛みを伴う治療だからです。
②歯茎が痩せている方に普通のインプラント治療をすると、最終的に入る人工歯は長い歯になってしまい、笑った時に上唇が上がると歯茎が痩せている分だけ長い歯が入っている仕上がりになってしまいますから審美的な問題が生じます。
また、歯間乳頭も喪失した状態なため本来であれば歯と歯の間は三角形の歯肉(歯間乳頭)で埋まっているのですが、喪失しているため歯と歯の間にブラックトライアングル(歯間乳頭が無いためにスキマから口腔内の暗さが黒い三角形に見える現象)というスキマが出来て、息が漏れたり食べ物が挟まりやすくなったりします。
歯を失うと歯肉が痩せるだけでなく、歯と歯のスキマに存在した三角形の歯肉(歯間乳頭)も失って歯肉の高さは低くなり厚みは薄くなり平らになります。
オールオン4であれば、人工歯と人工歯肉が一体式になっていますから、歯肉も歯列も綺麗な見た目に改善できるわけです。
部分入れ歯だと残っている自分の歯にハリガネを引っ掛けて自分の歯と入れ歯の歯と歯肉が混在した仕上がりになり見た目が不自然になりますが、全ての歯を失った総入れ歯だと逆に全ての歯と歯肉を人工物で見た目を改善できるので審美的に仕上がるのと同じです。
例えば前歯1〜2本が残っていて他の歯は全て失っているとします。前歯を抜かないで普通のインプラント治療をすると、元々の前歯の部分とインプラントの歯の長さや歯並びや歯肉との連続性が調和せず、仕上がりが審美的にならない傾向にあります。下手に少ない本数の歯が残っているなら抜歯した方がメリットが大きいという事です。歯科医学的には戦略的抜歯と言います。
例えば上の図の様に下顎に2本の犬歯が残存する症例。
歯列は3カ所に分断され、計6本のインプラントが必要になる。健康な歯だとしても抜歯すれば4本のインプラントでオールオン4が可能となる。
- ①前歯部分のインプラントは10ミリ以上の長さのインプラントを入れられる骨量があること。
- ②奥歯部分のインプラントは傾斜埋入した時に長さ13ミリ以上かつ直径4ミリ以上のインプラントを入れられる骨量があること。
- ③上記の①②の条件を満たした時に唇側の骨量が2ミリ以上あること。
- ④上記の条件を満たさない場合にはインプラントを1〜2本追加で埋入して「オールオン5」「オールオン6」となったり増骨手術をしたりします。
場合によっては非常に長いザイゴマインプラントを頬骨(ほほの骨)に傾斜埋入します。
ザイゴマインプラント画像 - ⑤全ての歯を抜歯した後に凸凹になった顎骨を健康な部分を含めて削除して骨の平坦化をスマイルラインの上唇より内側に削除面が隠れる位置まで行う必要があります。
ボーンリダクションという手術になりますが最終的に入る人工歯と人工歯肉の付け根(トランジションラインと言う)が笑った時の上唇のラインの内側に隠れるようにするために必要になります。
画像①や②のオールオン4の上部構造の付け根が笑った時に見えてしまうと審美的に不自然になってしまうので当院のオールオン4はスマイルラインより上に付け根が隠れるように埋め込み手術の時点で逆算して骨の高さの平坦化と削除、整形を同時に行っています。
オールオン4上部構造の付け根はスマイルラインの唇の内側。つまり青の破線の位置に設置されるように手術前に計画して治療開始します。この治療例ではセラミックではなくプラスチックで作った仮歯です。最終的にはこの画像より自然な歯と歯肉で仕上がります。
ボーンリダクションを行わないと下の画像のように審美性に問題が出てしまいます。
リダクション不足により審美障害を認めた症例
- ① かなり長いインプラントを斜めに埋め込まなければならない
- ② 日本人の顎骨は薄いのでALL ON 4は適さずALL ON 6でなければ無理な場合が多い。
- ③ 歯も歯肉も人工物になるため発音がし辛くなることがある。
- ④ 4本のインプラントで総入れ歯を支えるので、インプラントが1本でもダメになると総入れ歯をすべて作り直す可能性が高い
さすがに3本インプラントでは支えられない。
※通常のインプラント治療では「右奥」「前歯」「左奥」の3分割に区切って歯を完成させるので、10年以上も経過してインプラント1本に不具合が生じても部分的に再治療が可能。 - ⑤ALL ON 4は4本のインプラントで10本の歯を支えます。通常、人間の歯は14本なので左右の奥歯が2本づつ、計4本の奥歯が足りてない状態で完成なので咬み応えの満足感は通常のインプラント治療より低いです。つまりオール(全ての歯)ではないのです。因みにALL ON 6は奥歯が合計2本足りていない状態で完成です。
- ⑥抜かなくても良い健康な歯が残っている場合は全て抜歯しなければ治療できません。
下顎に2本の犬歯が残存する症例。歯列は3カ所に分断され、計6本のインプラントが必要になる。
残存する2本の犬歯を抜歯しなくてはならなくなる。
以上がALL on 4(オール オン 4)の欠点およびデメリットです。
3Dプリンタによる顎骨模型の作製
最近では3D関連の技術が進歩しています。そのため手術を事前にコンピューター画面上でシミュレーションするソフトが当院にはあります。
更に当院では骨量が少ない難症例の場合には患者さんのCT情報から3Dプリンタを使用して3D顎顔面の骨の実寸大の模型を作り治療に役立てています。
これにより手術前に患者さんの顎骨、頭蓋骨とほぼ同じ模型を手に入れることができるのです。当院では難症例の場合には、この模型の骨を使って模擬手術をするようにしています。
模型があれば、実際に患者さんの手術をする時には担当医は、既にその患者さんの手術をしたことがある状態なので、2回目の手術をするようなイメージとなるわけです。
患者さんの解剖学的特徴や上顎洞の形態、顎骨の中を走る神経や血管を立体的に把握できていますので、担当医も患者さまも安心して手術を受けて頂くことができるのです。
患者様の実寸大の模型
患者様の実寸大の模型
1DAYインプラント・オールオン4・手術当日の流れ
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10:00(ご来院)
術前に抗生物質、鎮痛剤を内服。手術前の同意書の確認 -
10:30(手術前の準備)
抜歯予定の歯がある場合は抜歯しておきます。口腔内クリーニング。手術後の仮歯を事前に調整。 -
11:00(手術)
必要な場合は歯科麻酔医の立ち会いのもと静脈内沈静法を行います。 -
13:30
手術終了。 -
13:30〜14:30(型取り)
歯科技工士の立ち会いのもと当日の仮歯を作るための型取り。噛み合わせの確認。 -
14:30〜18:15(休憩)
患者様は当院の正面にあるJR東日本ホテルメッツ赤羽にて3時間ほど休憩して頂きます。部屋は当院が予約して費用も当院が負担いたします。
(この間に技工士がインプラントに装着する仮歯をスピード仕上げします。) -
18:15(仮歯の固定)
固定式の仮歯をインプラントにネジ止め。噛み合わせ調整。 -
18:45(帰宅)
術後の注意事項説明書とお薬をお渡しします。次回の予約日(抜糸)を決めてご帰宅となります。